【スイス視察報告①】ホーベルヴェルク集合住宅地とスイスにおける住宅建設共同組合の取り組み

◆ スイスの企業形態と住宅建設共同組合とは?
スイスでは「建設共同組合」という形態が市民の暮らしを支える仕組みとして広く活用されています。出資額に関係なく1人1票の民主的な運営が行われ、営利を目的とせず 公益性を重視しています。この方式は エネルギー・金融・農業・食品・住宅分野など多様な分野に活用されており、特に住宅分野では都市政策と連携して重要な役割を果たしています。

◆ 住宅建設共同組合の意義
19世紀末、劣悪な住宅環境に対抗して労働者・市民が自ら設立したのが始まり。非営利・公益性を基本とし、質の高い低価格な賃貸住宅を供給。スイス全体で約2000件、住宅市場の約5%がこの形態。チューリヒ市では25%(目標30%)、ビンタートゥール市でも11%が共同組合住宅となっています。

◆ ホーベルヴェルク集合住宅地の取り組み


今回視察した ホーベルヴェルク集合住宅地(チューリヒ市+地域30の建設共同組合「モア・ザン・ハウジング」が推進)は、次世代型の 脱炭素+コミュニティ住宅の象徴的な事例です。

▶ 住宅・まちづくりの特徴
木造高層建築+リユース建材を活用 → エンボディドカーボン(建設時CO₂排出)を最小化
エネルギーネットゼロを目指す(空気ヒートポンプ+ペレットボイラーによる地域熱供給)
雨水管理(スポンジ都市型)にも配慮
シェア型住宅・高齢者用グループ住宅・障がい者用住宅など多様な住まい方を実現
共有空間の充実(用途は住民が決定)

車の保有を原則禁止 → カーシェア制度あり

▶ 財務と運営
民間と比較して 低金利(1.5%)
国・市からの支援(低価格長期借地・低金利融資など)
住民参加型の運営(住民が共有空間の用途や予算を決定)
修繕費用は家賃に含め長期計画的に管理

◆ スイスの省エネ建築・エンボディドカーボンの動向
スイスでは 省エネ基準が厳格化されており、化石燃料禁止+太陽光発電義務化が進行中。現在は運用段階の省エネ化が進んだため、建設段階のCO₂排出(エンボディドカーボン)が新たな重点領域になっています。欧州ではLCA(ライフサイクルアセスメント)評価の義務化が進み、スイスでも段階的な強化が見込まれています。木造・環境型断熱材(セルロースや藁など)の活用、既存建物の改修優先が重要な対策とされています。

◆ 視察を通じた学びと日本への示唆
スイスでは、建設共同組合という形態が「持続可能で公平な住宅政策」の柱として実践されています。脱炭素・多世代共生・コミュニティ形成が一体化しており、行政も積極的に支援しています。
こうした仕組みは、日本でも 高齢者・障がい者・若年層が共生する住宅政策や、公共住宅・地域再生・省エネ政策に応用可能な示唆が多く含まれています。

袖ケ浦市でも公共住宅や公有地活用の在り方を考えるうえで、非常に参考になる先進事例と感じました。今後、視察で得た知見を市政にも活かしていきたいと考えています。

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