【スイス視察報告④】オーストリア・フォアアールベルク州における気候中立・地域政策と食育の実践

◆ E5制度と気候エネルギーモデル地域(KEM)
オーストリアには、自治体の省エネ・再エネ政策を評価する「E5制度」があり、最高評価は「E5」。視察先であるヒティスアウ村やランゲンエッグ村は、最も高いレベルでこの評価を得ており、「エネルギー都市(ゴールド)」に相当します。

また、「気候エネルギーモデル地域(KEM)」という制度では、6つ以上の自治体が連携し、広域での気候中立政策を推進。現在までに130地域・350万人が参加しており、200万人以上が「気候変動適応地域」にも登録。プログラムの実行には、地域ごとに「気候マネージャー」が任命され、政策立案・運営の中核を担っています。

※この制度は日本でも導入が始まっており、「エネルギーエージェンシー岩手」「エネルギーエージェンシー長浜」などが立ち上がっています。

◆背景と予算
プログラム開始は2007年
これまでの投資総額:約40億ユーロ(EUの基金が支援)
目標:2040年までに気候中立(ネットゼロ)
地域ごとの取り組み例:再エネ:太陽光、バイオマス、水力、風力(ただし風力は政治的抵抗あり)
農業:納屋に太陽光パネル設置、間伐材活用、薪の流通プラットフォーム構築
森林:開発は控え、健全な林業を維持。冬に害虫が死なないリスクも指摘

2.組織運営と財源構造
気候マネージャーは80%を雇用
地域の行政、建築士、住民チームで構成される「E5チーム」が実行計画を策定
補助金:75%が補助、25%は自治体が負担
3年間で最大50万ユーロの支援
モチベーション:雇用創出・地域の活性化・次世代への責任「子ども為の次世代を作る(子供がまちづくりの中心)」

3.学校給食と食育の取り組み(KEMと連携)
フォアアールベルク州では、学校給食を通じた気候・教育政策も進行中。

◆特長と仕組み
地元材で建てた学校(木造)
学校内に調理場を設置(ガラス張りで調理の様子が見える)
ワーキンググループがコンセプトと運用設計に参画
初めは200食 → 現在は1万5千食供給
献立:地産地消/有機農産物使用(助成金に反映)/肉は週1〜2回※飲料は水のみ(添加物なし・調味料も自家製)
食育により、子どもたちは「何を食べているか」を理解し、持続可能性と健康を意識する習慣を獲得。

4.教育施設と地域設計
三つの小学校が連携する新校舎(既存建物を改修し再利用)

子どもたち自身がアンケートに参加し、校舎の形状などを決定
森で伐採した木材を自らの校舎に使用
体育館や介護付き住宅も併設し、地域福祉にも貢献
村長の方針:「子どもをまちづくりの中心に」

5.まとめと示唆
・気候政策、教育、農業、エネルギーが「地域単位」で一体化されている
・財政制約の中でも創意工夫により、高度な自治と住民参加が実現
・日本の自治体においても、地域主導のエネルギー政策や食育との連携による「まちづくりモデル」として学ぶ点が多い

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