3度目の紫波町③オガールタウンで学んだ事
〜「48kWhのルール」が、なぜ即完売の街を生んだのか?〜
「エコハウス」や「高性能住宅」という言葉を聞いて、皆さん何を思い浮かべるでしょうか。「窓が小さくて閉鎖的」「建築コストが高くて手が届かない」等々…
オガールタウンには、「理にかなった束縛」が存在します。以下がその事例です。
①窓を大きくするための数値設定
この街には、「年間暖房負荷を48kWh以下にする」という厳格なルールがあります。(=一般家庭の3分の1の電気消費量)。そして48kWhという高いハードルは、高度な断熱性能+太陽光の熱(日射取得)を最大限に活用しなければ決して達成できません。「48kWhをクリアするために太陽の光をできるだけうまく使わなければいけなくなり、南側に大きな窓を作ることを誘導する数字になります」
②外観のギャップ:性能が形作る「機能美」という装飾
太陽のエネルギーを最大限に採り込む南側とは逆に、北側に回ると、熱を逃がさないために窓は極端に小さく、南側=開放的、北側=要塞みたいな感じになります。
③ 「北側斜線制限」から生まれた繋がり
建物だけでなく、敷地の境界線についても厳格なルールが街の風通しを支えています。
• 隣家との間に「塀」を作らない
• 1軒につき5本の木を植え、街に緑を配る
• デザインを統一した門灯が、夜の街路を照らす
また「繋がり道」と呼ばれる歩行者専用通路の設計。「建物と建物の間に塀を作らない。車に触れないで歩けるような道を作る。それを『繋がり道』と呼んでいます」。この「繋がり道」は、プライバシーを守りつつも、子供たちが車を気にせず駆け回る事ができます。
④ 地元の職人たちが「プロフェッショナル」に変わるまで
このオガールタウンを作ったのは、大手ハウスメーカーではなく、17社の地元工務店です。当初、難解な数値目標やシミュレーションソフトを前に、職人たちは「閉口」しました。しかし、父と娘が経営する工務店が現れ、計算業務を担っていた娘さんがシミュレーションソフトを使いこなし、今までの長年の技術、直感(=お父さん側)を数値に基づいた設計の優位性(=娘側)を証明しました。かつては年間1〜2棟だった同社の施工数は、全盛期には年間4〜5棟の新築を手掛けるまでになったといいます。
⑤銀行員も即決する「資産価値」の証明
オガールタウンは、一般の人々に手が届く「アフォーダブル」な価格帯での高性能です。そしてその価値は、市場によって客観的に証明されました。57軒が完売した数年後、一軒の物件が中古市場に出された際、その価値を正しく理解していた地元の銀行支店長が、即座に購入を決めたといいます。
これは、資産価値を定める金融のプロの目線からしても「確かな資産」として認められたことを意味します。高性能=将来の売却価格を維持し、光熱費というランニングコストを抑える。
あとがき
性能、コミュニティ、そして経済性。「48kWh」という数値を起点に、これら三つの要素がこれからの日本の住まい方の標準(スタンダード)を示唆しています。
心地よい家とは何か。価値ある街とは何か。
以前、インドネシアのバリへスキューバダイビングの講習を受けに行った時、現地で親しくして頂いたイタリア人に言われた事を思い出します。「スキューバで大事なことは自分のPortionを覚えておく事。自分が快適だと思える姿勢を覚える事が上達の秘訣。人生も一緒だ」と。家にいる快適性を求める事は個人と言う機能性を高める事だと言う風に私は捉えています。


