紫波町「ノール・プロジェクト」 〜 農のある風景と高付加価値戦略 〜
岩手県紫波町。人口約3万2,000人。私がこの町を訪れるのは今回で3回目になります。それだけ全国から注目を集めている自治体です。
その象徴が、駅前再開発エリアオガール。
かつて「日本一高い雪捨て場」と揶揄された広大な空き地に、人が自然と集まる“仕組み”を埋め込みました。スーパー(マルシェ)、体育館、ホテル、図書館、集合所、町役場、飲食店、カフェ、病院――日常生活が一通り完結する都市機能を集約。その結果、人口3万人の町に年間80万人以上の交流人口を生み出し、今や行政視察の名所となっています。
◾️オガールの次なる挑戦
そのオガールから車で約15分。学校としての役割を終えた小学校を舞台に、新たな挑戦が始まっています。
名付けて 「ノール・プロジェクト」。テーマは「農のある風景」です。
【特 徴】
・元グラウンドを造成し、段々畑へと再設計
・アパート2棟(うち2部屋は民泊)+ホテルを整備(6部屋のみ)
・田んぼや畑、紫波町の風景を活かした景観設計
・正面に町の象徴 東根山 を望む配置
目の前に農園風景が広がり、その奥に東根山が鎮座する。
全ての建物配置はこの“風景”を最大化するために設計されています。
地域の人々の山への思い入れの深さが、空間デザインにまで反映されています。


農 × 建築 × 食
単なる空き校舎活用ではありません。延床約67坪、集合住宅6戸
1階にグロサリー「乃木マート」/薪火レストラン/ホテルと一体運営のオーベルジュ
レストランは三軒茶屋で長年腕を磨いた森田シェフが移住して開業。地元食材を最大限に活かす料理を提供しています。
そして、建築性能も妥協がありません。
・UA値0.25
・C値0.5
・第一種熱交換換気(熱交換率80%との事なので室内が20度であれば18度にして外の冷却を室内に運んで来ます)
・年間暖房需要33kWh
高断熱・高気密仕様により、エネルギー効率と快適性を両立。

しかし、ここで一つの疑問が浮かびます…。
袖ケ浦市でも以前、駅前に地域食材を使った出汁や菓子、軽食を扱う(やや高価格帯の)店舗がありましたが、5年持たずに終了しました。(1日平均乗車人員は、近年約4,800人〜5,600人)
袖ケ浦駅前でも成立しなかったものが、紫波町にある駅から車で15分の立地で本当に成立するのか?
店員に尋ねると、「夏は多くの客で賑わったが、冬はそうでもない」とのこと。
つまり、通年型大量集客モデルではなく、
・ホテル宿泊者
・高性能賃貸住宅の入居者
・オーベルジュ利用客
という富裕層・目的来訪型に絞った戦略となっています。
まだまだ、挑戦は続く様です。要注目!


