【スイス視察報告】⑦〜スルセー村「木の家」プロジェクト〜
スイスのスルセー村にある、BIMと木造ZEB、サーキュラー建築を融合させた先進的な集合住宅兼オフィス「木の家(Haus des Holzes)」を視察。これはピルミン・ユング氏が率いる、スイス有数の木造エンジニアリング会社の自社ビルでもある。

■ 主な視察ポイント
① 木造建築による気候変動対策
建設業はCO2排出量の主要因(飛行機3%、船舶2.9%、建設業はそれ以上)。
木は炭素を吸収・固定する天然の「炭素ストック」。
今後30億人分の都市住宅を木造でまかなえば、気候変動対策に大きく貢献。
② サステナブルでサーキュラーな構造
すべての部材はデータベース化され、将来の分離解体・再利用が可能。
金具・ネジを使わない設計、塩を利用したバッテリー、地域木材94%使用。
「地元の木材→地域経済の潤い→健康→未来の酸素供給」という循環を強調。
③ デジタル建築の徹底活用(BIM)
設計・建設・運用すべてをBIMで統合。紙図面・Eメール不使用。
モデル上で各部材や配線の情報に即時アクセス可能(“デジタルの双子”)。
職人約360人がBIMアプリを用いて、現場で施工図や仕様を確認。
380の専門モデルを統合(建築、電気、水回りなど)。



④ 実績と成長
1996年に2人で創業、現在は154人(ほとんどが元・大工職人)体制。
4階建て木造集合住宅や60m・15階建て高層木造ビルなど、多数の実績。
チューリッヒ空港でもプロジェクト実施。(最大規模のプロジェクト)

⑤ コストと価値
木造は従来工法より2〜6%高いと説明し納得を得る。
当初1800万ユーロ予定が2600万ユーロに(800万ユーロ超過)も、投資家支援で実現。
完成後は7,000人が視察、プレゼン300回実施。
⑥ 教育・人材育成
木造の専門大学設立。卒業生は世界の木造プロジェクトで活躍。
人材不足下でも応募多数。実務とデジタルに通じた人材を育成。
⑦ 想いと哲学
「自宅より心地よく感じてもらう」空間づくり。
建物は単なる機能ではなく、共有・教育・啓発の場。
行動を変えることで、次世代に希望をつなぐ。
【感想】今回、スイスへ訪問してとても記憶に残る視察の一つ。何よりこの社長は大工上がり、進める施策は紙一切なしのデジタル化の徹底、何より社員が働きやすそう(机も座って仕事をしたり、立って仕事が出来る様に机の高さを自動で調節できる)、これから日本も人口が減っていきます。その様な中、仕事場でも例えば教育でも一人一人の空間を大きくして働きやすく、勉強しやすくしていく為のチャンスでもあると痛感。その為にも如何に心地よい空間を作っていくのはこれからの日本の命題ですね。